梅古庵
月ヶ瀬で700年変わらぬ伝統製法で烏梅(うばい)づくりを営む。古くは漢方薬の原料や染料、口紅の原料として使用されており、日本で1300年の歴史を誇る。戦後、化学染料の流入により、需要が激減。現在では日本で唯一の烏梅製造所を営む。烏梅の他にも、梅干しやジャムなども製造販売。
原点回帰
①変わらぬ製法で自然循環
7月の半夏生と呼ばれる時期からスタートする烏梅づくり。梅の木から自然落下した梅を一つ一つ手作業で拾い集め、収穫から乾燥まで約1ヵ月半をかけて烏梅を製造します。収穫した梅に炭を被せ、丁寧に並べた後、自家製の窯で燻蒸します。燻蒸には、稲作ででたもみ殻や稲藁、クヌギを使用し、全体が燻蒸するよう24時間、目を見張りながら温度を管理し、燻蒸後は天日干しを行います。この作業を26回程度繰り行います。
この工程では、化学素材を使用することなく、自分の畑や田んぼ、山から採取し加工した自然由来のウメスダレやムシロ等の道具・材料を使用し、700年前と変わらぬ伝統製法で烏梅を製造しています。
皇室で使用される着物の素材や東大寺修二会の行事で使用される和紙にも烏梅は使用されています。
②烏梅づくりの伝統技術を後世に残し、烏梅の需要を喚起するために。
化学染料のない時代に欠かせない材料として重宝されていた「烏梅」。キク科の植物で黄色い花が咲く「紅花」と合わせることで鮮やかな紅色の染料ができることから、古くは日本女性を彩った口紅・頬紅の原料としても使用されてきました。
紅花の花びらに含まれる赤色色素はわずか1%、99%が黄色色素で構成されており、灰汁を使って赤色色素を抽出します。その後、烏梅を使い発色させます。この赤色色素の濃度を高めることで色鮮やか紅色があらわれ、乾燥すると「玉虫色」へと変化し、古来の色が復元されます。
この古来の製法を活用し、自然由来の口紅づくりに取り組んでいます。アレルギーを持つ方や敏感肌の方や低刺激で安全、更には環境にも優しい口紅を作ることができます。また、紅箱や紅猪口、化粧筆には、吉野杉や奈良の伝統工芸品である赤膚焼、奈良筆を利用する予定で、自社の魅力だけでなく奈良の魅力を発信していく予定です。
③ 烏梅をもっと多くの人に知ってもらうために
「日本最後の烏梅作りを残したい。知られざる梅の魅力を伝えたい。」そんな思いを持って、現在、紅工房を建設中です。化学染料以前の紅世界を再現する為の建築中の紅工房では紅の生産、烏梅や農産物の保管のほか、烏梅染体験が出来る設備を設け、2024年の春に完成する予定です。
建設にあたっては所有している森・畑の耕作放棄地を活用し、施設では環境に配慮し、水は天然の山水・天の水を濾過した上で使用。使用後の水は紅花畑へ散水します。散水に当たっては、建物から水路を作り、自然循環できるよう整備しました。また、森は散策・展望出来るよう整備し、整備で出た木材は、足場や烏梅づくりの材料として活用します。この施設が、烏梅の魅力を発信する拠点として、また、地域に人が訪れるきっかけの1つになれたらと思い進めています。
会社名/梅古庵 |
場所/奈良市月ヶ瀬尾山2263 |
創業/ー |
業種/烏梅製造、農産物加工品製造 |
URL/https://baikoan.wixsite.com/baikoan |